■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
                         2005/05/10
         自主学習のコツ Vol.004
                        薮荷筒丸
    バックナンバー: http://www.flsi.co.jp/gakushu/
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■



======================================================
2.学習意欲を高めるために
======================================================

強い目的意識と目標を持つことが、学習意欲を高めるためにきわ
めて重要だというお話をしましたが、その実例を下の本の中にも
見ることができます。勉強のコツについても少し書かれています。

「だから、あなたも生き抜いて」
http://www.flsi.co.jp/books/ikinuite1.htm

これは、かなり壮絶なお話ですね。


さて、勉強の目的をはっきりさせるということは、基本的には、
自分が将来何をやりたいのか、どんな職業に就きたいのか、を
はっきりさせるということです。

自分の好きなこと、自分が情熱を持って取り組めるものが何で
あるかを考えてみましょう。自分の夢や希望が何であるかを考
えてみましょう。情熱といっても一時的に好きになってすぐ飽
きてしまうようなものではなく、長く持続できるような情熱を
注げるものでなければなりません。ゆるぎない情熱をささげら
れるものを将来の職業として選びましょう。それを見つけられ
るかどうかが、以後の自分の人生が充実した幸福なものになる
かどうかに大きくかかわってきます。

長い人生(短い人生ともいいますが)、さまざまなことを学ん
だり経験したりしていくうちに、考え方も変わってくることが
あり、夢や希望も変わってくることがあります。でも、途中で
希望が変わってもかまわないのです。とにかく常に夢や希望を
持っていることが大切です。

将来何になったらいいのか、どうしてもわからない人は、さま
ざまな偉人の伝記を読んでみるといいでしょう。伝記だけでな
く、さまざまな種類の本をできるだけたくさん読んで見識を広
めて欲しいものです。きっと、その中に自分の求める生き方を
見出すことができるはずです。

また、学校のいろいろな教科を一生懸命勉強しているうちに、
自分の好きな教科や得意な教科がはっきりしてきた場合は、そ
れも将来の職業を決める手がかりになります。

それでも、自分が何をやったらいいのかわからない人は、何か
人を助けるような仕事(医者とか心理カウンセラーとか何かの
慈善事業を行うNPO団体の職員とか)を選ぶと、まず後悔する
ことはないでしょう。
社会性動物である人間の本能に合致しているからです。


もちろん、自分の将来を家族や周囲の親しい人や学校の先生に
相談しながら考えてもかまいません。というより、親や家族は
あなたの将来をいつも気にかけているはずです。でも、最終的
には、あなた自身が決めなければなりません。


        ****** *****
親は子供の将来を強制してはいけません。子供がどんな将来を
目指すにしろ、親は子供の能力や可能性をできるだけ引き出し
て伸ばしてあげ、子供が間違った方向に進まないように見守り、
正しい方向に進んでいるのであればそれをできるだけ支援して
あげて欲しいと思います。
        ****** *****


将来何になりたいのかが決まれば、それに至るためにどのよう
な進路を歩めばいいのかを調べ、それぞれの節目に目標を設定
し、その目標に向かって勉強していくことになります。具体的
な進路については、家族や先生や周囲の人に相談してみてくだ
さい。目標の立て方や計画の立て方については、また後ほど
説明します。


ところで、学校教育には、以下の2つの種類があります。

1.普通教育: 心身を鍛え、一般教養を身につける教育。
 (義務教育では普通教育が行われている)
2.専門教育: 専門的な知識や技能を身につけ、職務に備え
  る教育。(高校以上では、普通科のように普通教育のみを
  行っているところもあれば、商業高校や工業高校、高専な
  どのように専門教育を行っているところもある。)

このうち専門教育の方は、文字通り、職務に備えて専門的な
教育を行うわけですからわかりやすいとして、普通教育の方は
いったい何のために行うのでしょうか。

普通教育は、職業教育の基礎になるという一面もありますが、
基本的には別のところに重点が置かれています。
通常は、次のような説明がされるようです。

普通教育における、「一般教養を身につける」というのは、
国家や社会の一員となるために必要と考えられる一般的な知識
や技能を幅広く身につけることです。日々の生活や社会への
参加にあたって必要と考えられる汎用性のある知識や技能を
身につけることです。

しかし、日々の生活のためや、国家や社会の一員になるため
に必要な知識や技能がどこからどこまでの範囲になるかという
ことについては必ずしも明確ではありません。
実際に学校で習っていることで、テストに出る以外は、生活の
場でも職場でも一切使われずにそのうちに忘れ去られてしまう
ような知識はたくさんあります。
逆に生活の場で必要と思われるのに学校では教えられていない
こともたくさんあります。
重箱の隅をつつくように現在の教育内容を批判したらきりがない
でしょう。

現在の教育が本来の目的に合致していないと文句をいうよりも、
それを有効に利用することを考える方が得策だと思います。自分
で何が必要なのかをよく考え、与えられる教育は有効に利用しな
がら、自主的に学習する態度の方が重要だと思います。



教育の目的や目標は教育基本法や学校教育法に規定されています
ので、ここで、教育基本法からとくに重要と思われる部分を抜粋
しておきます。

============================
教育基本法

 われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な
国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする
決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつ
べきものである。
われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の
育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の
創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。
ここに、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい
日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する。

第一条(教育の目的) 教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家
及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつ
とび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な
国民の育成を期して行われなければならない。

第二条(教育の方針) 教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる
場所において実現されなければならない。この目的を達成するため
には、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、
自他の敬愛と協力によつて、文化の創造と発展に貢献するように
努めなければならない。

第三条(教育の機会均等) すべて国民は、ひとしく、その能力に
応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであつて、
人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によつて、
教育上差別されない。
(2)国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由に
よつて修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない。
============================

第三条は、教育の目的とは関係ありませんが、「経済的地位によっ
て、教育上差別されない」というところが引っかかるので、わざと
掲載しました。というのは、現実には、裕福な家庭の子供ほど高い
学歴を有する傾向があるからです。つまり、教育の機会が均等に与
えられているとは、必ずしも言えないのです。この問題は、ずっと
後にまわすことにして、教育の目的の話に戻りましょう。


私は特にここに注目します。「・・・民主的で文化的な国家を建設
して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意・・・。
この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。
・・・」

そうです。民主的で文化的な国家を建設し、世界の平和と人類の
福祉に貢献することが、我々の理想なのです。

しかし世の中には、理想どころかさまざまな問題があり、問題は
むしろ増える一方のようです。問題の多くは、ほったらかしにす
るとますます増大していくものです。
私たちは、愛する子供たちが不幸になることは望まないでしょう。
愛する子供たちに問題を押し付けたくはないでしょう。できるだけ
問題を解決した状態で次の世代に交代したいものです。

そのためには、幅広い知識と思索と行動が必要になるでしょう。
学校で習う一般教養だけに終わらせず、幅広くさまざまな本を読み、
さまざまな人と語り合い、さまざまなメディアから情報を吸収し、
真実はできるだけ現地に行って直接自分の目や五感で確認すること
も必要だと思います。
そうして、できるだけ理想的な国家や社会(世界)を建設すべく
互いに協力しながら積極的に社会に参加していきたいものです。



一般教養を学習することには、以下のような意義もあるでしょう。

1.子供たちにはさまざまな才能や能力が潜在しており、それは人
によって異なります。それらの能力を引き出し、育成していく機会
や環境が与えられなければ、それらの能力は発達しないまま歳を重
ねるうちに消えていってしまいます。このような可能性を引き出し、
発展させるためにも幅広い分野の教育を行う必要があります。
(しかし、学校では引き出せないような才能や能力もあります。)

2.それらの中から自分の得意分野を見出し、自分の真の能力を知
り、自信を持てるようになることにも意味があります。
(しかし、学校で習わない分野で能力を発揮する人もいます。)

3.以上を踏まえ、また自分がどの分野が好きであるのかを知る
ことによって、職業選択の目安が得られます。

4.勉強すればするほど頭はよくなります。勉強すればするほど
新しい知識を習得しやすくなります。社会人になってから新たに
必要になる知識や技能も、前もって基本知識が学習されていると
容易に習得できます。しかし、学習能力が高いのは若いうちです。
将来勉強が必要になっても、若いうちに勉強しておかないと手遅れ
になるか、大変な苦労をすることになります。しかも、容易に習得
できるのは、過去に似たような種類の知識や技能を習得した分野に
限られます。したがって、幅広い分野の知識や技能をできるだけ
若いうちに修得しておくことが望ましいのです。

5.正しい知識や科学的な思考力が欠けていると、サギ集団やカルト
的偽善団体などにだまされやすくなります。だまされないための
知識には一般教養から身につくものもあります。(でも最近の高度な
騙しのテクニックには、学校で学べるものだけでは対応できない。)

6.さらに幅広く多くの教養を身につけるためには、本を速く
たくさん読めるようにしておくことが有効ですが、いろんな本を
速く読めるようになるためには、いろんな知識を頭に入れておく
必要があります。つまり、教養が豊富であればたくさんの本を速く
読むことができ、たくさん本を読むとさらに教養が豊富になるという
相乗効果があるのです。

7.豊富な語彙を持っていることは重要です。豊富な語彙(特に名詞)
の中には、たんに別の言葉を言い換えただけの単純な言葉もあれば、
複雑な概念や抽象的な概念にラベル(名前)をつけたものもあります。
複雑な概念や抽象的な概念をいちいち説明するのは面倒ですが、その
ラベルである名詞を使用することにより、説明を省くことができ、
簡潔に意思を伝えられるので便利です。したがって、教養のある人は、
このようなラベルを多用することがあります。
豊富な語彙を持っていることは、広くさまざまな人たちと交流を深め
る上で役に立ちます。

8.幅広い豊富な知識を迅速に身につけるためには、効率のよい自分
に合った学習方法を、自分なりに工夫して身につけておくことが有効
です。学んだ知識そのものは忘れてしまっても、そのときに会得した
学習方法の方がいつまでも役立つということも少なくありません。

9.豊富な知識は、思考や発想の豊かさや柔軟性につながります。た
とえば、何か特定の分野の研究者になったとしても、その分野の科目
の勉強だけでなく、他の分野の科目の知識がヒントになって、新しい
発見をすることは多々あります。

10.知的好奇心の旺盛な子供は、親にいろいろな質問を浴びせるこ
とがあります。親に豊かな教養があると助かります。

11.一見嫌いだと感じた科目も一生懸命勉強してみると段々と面白く
感じてくるとか、一生懸命勉強していること自体が実は楽しいことだと
気づくようになるとか、知識を整理すると気持ちがすっきりすること
に気がつくとか、自分の心にもプラスになることがいろいろあるで
しょう。


        *** 続く ***


======================================================
*.雑談コーナー
======================================================

一般に若い人ほど学習能力が高いといわれていますが、とりわけ
学習の時期(タイミング)が問題になるものがあります。絶対音感
や語学や楽器演奏やスポーツ(運動神経)などがそうです。これら
の学習は、おとなになってから始めたのでは困難を極めます。
子供たちがまだ将来何になりたいのか決められない時期から始めて
おかなければならないわけです。
親は子供の将来を見越して、早めに学習の機会や環境を提供し、
能力を引き出してあげなければなりません。

特に、絶対音感の教育は、幼児が言葉をしゃべれるようになった
ら、できるだけ早めに(3歳までには)始めるべきだと言われて
います。大人になってから学び始めたのでは絶対音感を身につけ
ることは不可能で、7歳頃までには学んでおかなければならない
と言われています。
もちろん、無理強いをするのではなく、本人が遊び感覚で学べる
ように、楽しい教育にすべきです。ピアノを習ったりしている
うちに絶対音感を身につける子供たちもいますが、できれば
専門家のところで学ばせた方がいいですね。

特に外国語の学習で障害になるものに、音韻の識別の問題があり
ます。たとえば英語の場合、rice(お米)とlice(シラミ)を聞
き間違えると、大変なことになってしまうかも知れません。英語は
まだ音韻が比較的単純な方なのでいいのですが、大学などに入って
第二外国語や第三外国語を習うようになると、もっと大変な困難に
遭遇することになります。
外国語には、日本人にとっては同じような音に聞こえてしまうよう
な音韻がたくさんあります。しかも、大人になってから外国語の
勉強をはじめても、同じような音に聞こえる音韻はどんなに学習して
も、やはり微妙な違いにしか感じられません。その微妙な違いに集中
して言葉を聞き分けるか、あるいは文脈で判断するしかないのです。
このような、日本人にとっては音の違いが微妙で区別しづらい音韻
も、その言語を母国語とする人々にとっては完全に異なる音韻なの
です。微妙な違いなどではありません。

このことは、赤ちゃんのときから外国で育てられた日本人が、外国人
とまったく同じように音韻を聞き分けられることから、人種に依存
するものではないことがわかっています。

実は、生後4〜6ヶ月頃の赤ちゃんは、すべての言語の音韻の区別が
可能なのですが、生後10ヶ月〜12ヶ月頃になると、母国語の音韻
だけ区別するように脳の仕組みが変わってしまうことが最近わかっ
てきています。そしてその後はこの仕組みは変わりません。つまり、
幼児の間に母国語にチューニングされてしまうのです。そのため、
大人になってから外国語を学習しても、微妙な音韻の違いは、いつ
までたっても微妙な違いでしかないのです。

したがって、ネイティブ・スピーカー(その言語を母国語とする人)
と同じように外国語の音韻を完璧に聞き分けられるようにするため
には、生まれて間もない頃から外国語の環境に置く必要があると
いえます。(たとえ、赤ちゃんを外国で育てられなくても、外国語
のビデオやテープレコーダーを常に聞かせてあげるなどの方法で
擬似的にその環境を作ることはできます。)



┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
★このメールマガジンは
     「まぐまぐ(http://www.mag2.com)」
          と
     「melma!(http://melma.com/)」
 を利用して発行しています。

★バックナンバーは
      http://www.flsi.co.jp/gakushu/
 にあります。

★このメールマガジンの登録解除は下記Webページでできます。
 「まぐまぐ」は http://www.flsi.co.jp/gakushu/
 「melma!」は  http://www.melma.com/backnumber_145821/

★ご意見・ご質問・ご感想をお待ちしています。
 ご意見・ご感想のWebページ
        http://www.flsi.co.jp/gakushu/kansou.htm
 にあるフォームをご利用いただけます。
 建設的なご意見やご感想が多いと、執筆の励みになります。

★下に、「不許無断複製」とは書いてありますが、このメール
 をそのまま印刷したり、そのままお友達に転送するなど、
 全文そのままを複製することには、許可は必要ありません。
 どうぞ興味をお持ちのお友達には転送してあげてください。
 読者が増えると、執筆の励みになります。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

Copyright (C) 2005 Future Lifestyle Inc. 不許無断複製