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46. | 難しい発音(その6) | |
前回お話した第三声や「不」や「一」の声調の変化については、ほとんどの教科書で説明されているようですので、きちんと学習している人はよく知っていることだと思います。(ただし、辞書に示されているピンインには標準の声調しかふられていないことが多いので要注意。) また、軽声については一般の中国人が必ずしも辞書通りに発音しているわけではなく、厳密なものではないので、日本人が軽声を覚えるのに神経質になる必要はないということも前回お話ししました(ただし、軽声で発音するか普通の声調で発音するかによって意味が違ってくる単語もあるので、その場合はきちんと使い分けを覚えるべき)が、これについては教科書にもほとんど書かれていないようです。 この「一般の中国人が辞書通りに発音しているわけではない」という声調は、軽声以外にもあります。 たとえば、 [動詞](車や船などに)積載していたものを卸(おろ)す、アンインストールする という単語があり、この単語は通常の辞書では第四声・第四声になっていますが、実際に北京在住の(大学卒の教養ある)中国人に発音してもらうと、半数くらいは第四声・第三声で発音します。つまり、 と発音する人と と発音する人がそれぞれ半々くらいいるのです。 さらには、 [動詞]~と見なす という単語になると、辞書では第四声・第四声になっていますが、実際に北京在住の(大学卒の教養ある)中国人に発音してもらうと、ほとんどの人が第一声・第四声で発音します。つまり、ほとんどの人は と発音します。 (ただし、テレビのアナウンサーは辞書通りに第四声・第四声で発音しているようなので、アナウンサーのように専門の発音訓練を受けている人と会話していると第四声・第四声が普通の発音だと思い込んでしまうかもしれません。 ちなみに、単語の意味から判断すると、当を と発音するほうが妥当だと考えられるため、 という発音が辞書に載っているのです。) という訳で、このように実際の中国人が辞書と異なる発音をしているという単語があるくらいですから、外国人である日本人が中国語の発音を間違えるのは全然恥ずかしいことではありません。少々発音があやふやでも少々間違った発音でも、気にせずに堂々と話す練習をしましょう。少々発音を間違えたり、あやふやであっても、文脈でカバーされますから大丈夫です。(とはいえ、発音をないがしろにしていいと言っているのではありません。声調(をはじめ正しく発音すること)は意思疎通のためにとても大切ですから、しっかり学ぶべきですが、少々間違えても気にする必要はないということです。) こういう辞書と一般人の発音の食い違いというのは、けっして中国語に限った話ではありません。 たとえば日本語でも 「英語(えいご)」を「えーご」、「政治(せいじ)」を「せーじ」というふうに発音する人が多し、 「体育(たいいく)」を「たいく」、「本当(ほんとう)」を「ほんと」、「格好いい(かっこういい)」を「かっこいい」というふうに、漢字を辞書上のふりがなと違う読み方をすることがよくありますね。「原因(げんいん)」にいたっては、日本人のほぼ全員が「げいいん」というふうに辞書と異なる発音をしているようです。 こういう食い違いはどこの国でもあるものだと思うし、また、同じ国であっても、地域によっても人によっても時代によっても違ってくるものでしょう。 さて、日本人が間違えやすい発音がまだ幾つか残っています。 今回は、iで始まる複合母音を取り上げてみましょう。 まずian(先頭に子音が付かないときはyanと書く)ですが、これを「ヤン」というふうに間違えて発音する日本人がよくいますが、「ヤン」ではなく「イェン」というふうに発音します。 紛らわしいことにiang(先頭に子音が付かないときはyangと書く)のほうは「ヤン」というふうに発音します。つまり末尾がnで終わるかngで終わるかによってiaの部分の発音が違ってきますので注意しましょう。発音は日本人の普通の発音で大丈夫です(ただし、nとngの発音については、vol.040などを参照してしっかりと発音すること)。 もう一つ間違えやすい発音としてiong(先頭に子音が付かないときはyongと書く)があります。この中のoの部分の発音をongの中のoの部分の発音と同じだと思っている人が多いようですが、違いますので注意しましょう。 ongのほうのoは日本語の「オ」に近いのですが、iong(yong)のほうのoは少し「ユ」に近い「オ」のような音になります。 ongのほうは日本語の「オ」のように口(くち)を丸めて「オン」と発音するのに対して、iongのほうは(の発音(vol.042参照)のときのように)口をすぼめて突き出した状態で少し「ユン」に近い「ヨン」のような音を出します。 ただし、iongは日本式の「ヨン」の発音でも中国人に通じます(ただし、vol.040などを参照してngの発音に注意して下さい)ので、そんなに気にする必要はありませんが、中国人の発音を聞くときには、「ヨン」と聞こえるときもあれば「ユン」と聞こえるときもあるということを頭に入れておいて下さい。 たとえば [名詞](ジャイアント)パンダ を発音するときには 「ダーションマオ」のように聞こえるときもあれば、「ダーシュンマオ」のように聞こえるときもあります。(赤い中国語文字をクリックすると発音を聞けますので試してみて下さい。) これはvol.040でお話したように、生後1年以降には音韻が母国語(日本語)にチューニングされてしまっているため、日本語の音韻である「ヨン」か「ユン」のどちらかの音としてとらえてしまうためです。 では、実際に単語で発音練習してみましょう(赤い中国語文字をクリックすると発音を聞けますので試してみて下さい。)。 まずongを含む単語です。 [名詞] 東 [形容詞] 赤い 次にiongを含む単語です。 [動詞] 用いる、使う、必要とする [名詞] 熊(くま) |
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今回は、ここで終わりにします。 (2012年07月31日) |
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