【楽しい中国語入門】 vol.047

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47. 難しい発音(その7)

 今回は、日本人が間違えやすい発音の残りを一挙にまとめて解説します。

 まず最初に、vol.043でいっしょに説明しておくつもりが忘れていたものがあるので、それを先にお話します。

 それは
iの発音についてですが、vol.043でお話ししたもの以外に紛らわしいものとして、 cizisiという音がありますね。 これらはチー、ジー、シーではなく、ツー、ヅー、スーというような音になります。 ただし、日本語のツー、ヅー、スーと違い、これらのiは口の構え方だけは英語の発音記号iと同じように口びるを横に引き伸ばして発音します。そして、「い」の音ではなく「う」の音をiの口構えで発音するのです。

 もちろん
ziは無気音だということにも注意して下さい。

 では、練習してみましょう。(下記ののマークをクリックして音声を聞いて発音練習して下さい。)

[名詞] 単語、語句
[名詞] 紫色
[数詞] 4


 ちなみに、南方の中国人のほとんどは、そり舌音(巻舌音)が発音できないため、chi、zhi、shiの音もci、zi、siと同じように発音します。

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 次に、ピンインの中に書かれない音を含む複母音の話をします。

 例えば、

[形容詞] 正しい
[数詞] 9
[動詞] しゃがむ、しゃがみ込む、じっとしている

をそれぞれドゥイ、ヂウ、ドゥンというふうに発音する日本人がけっこういますが、正確にはそれぞれ





というふうな発音になります。 つまり
duiの中にはejiuの中にはodunの中にはeの音が含まれていますが、実際のピンインにはこれらは書かれません。

 ちなみに、これらの複母音は、先頭に子音がつかない場合は、それぞれ
weiyouwenと表記され、eoがちゃんと表記されます。
 先頭に子音が付くときのみ
uiiuunと表記されてeoが省略されるのですが、発音はそれぞれueiiouuenというようにeoの音も発音されます。

 これらの
eoはどれも弱く発音されるためピンインでは省略されるのですが、ピンインに書かれていなくてもeoの音が含まれているということをきちんと覚えておきましょう。

 とはいえ、これらの
eoの音を省略して発音してもほとんどの場合は中国人に理解してもらえるので、あまり神経質になる必要はありません。

(ちなみに、
iououeieは第3声や第4声のときは比較的はっきりと発音されるというように声調によっても異なるという話もありますが、急いでしゃべるときとか、あるいは人によっても違いがあり、そんなに単純な話ではありませんし、こういった細かい違いはあまり重要ではありませんので、気にする必要はありません。)

 一つ注意しないといけないことは、の発音も先頭に子音が付くと
unと表記されることです。例えば、junqunxunというふうに書きます。また、先頭に子音がつかない単独の場合は、yunと書きます。つまり、どれもunを使って表記されます。

 という訳で、見かけが紛らわしいですが、これらは、
uenではなくの音ですので、間違えないようにしましょう。
 もっとも、の発音の場合、先頭に付く子音は
jqx以外はありえないので、junqunxunyun以外は、すべて、uenのほうのunになるということで覚えておけば簡単に区別ができるでしょう。

 たとえば、

[名詞] 優勝
[名詞] 雲南省(うんなんしょう)
[名詞] スカート

unの発音です。間違えないように、よく聞いて発音練習してみてください。

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 さて、日本人にとって一番分かりづらいのがr化の発音だと思います。
 r化については、以前vol.039で語尾の
について説明したときにも少し触れましたね。

 r化とは、単語の末尾にが付いて、
rの巻舌音が付くことを言いますが、このは日本式の漢字で書けばという字であり、本来は子供を意味する漢字です。そのため、なんとなく可愛らしいイメージを持ちます。日本語で言えば、ニャンコ(ニャン子?)とかワンコ(ワン子?)とか言うときのコに相当するのではないでしょうか。

 しかし、r化のの文字は、本来の子供の意味を持たず、単に
rの発音を表現する、いわば表音文字的に使われています。 (ちなみに
[名詞] 娘
などのように、が文字通り子供の意味を表すときはr化ではなく本来の
erという発音になります。)


 一般に、r化には以下のような働きがあります。

(1) 特に意味はなく、語感を柔らかくするために語尾にが付く。この場合は、を付けても付けなくても意味は変わらない。

(2) 同じ単語が複数の品詞で使われるときに、品詞を区別するために語尾にを付ける。
 たとえば、
[動詞] (絵を)描く、[名詞] 絵
という単語を動詞と名詞で区別するために名詞のほうにを付ける。この場合、を付けなくても名詞として使えますが、を付けたほうが名詞であることが鮮明になる。

ついでにお話ししておくと、中国語の動詞は、名詞としても使える性質がありますので、どんな動詞も名詞としても使えます。(このことを覚えておくと、単語の暗記が少し楽になるでしょう。ただし、逆は真ならずで、逆に名詞は必ず動詞としても使えるというわけではなく、名詞の中には動詞としては使えない単語もありますので、間違えないでください。

(3) 単語の末尾にを付けることによって別の意味にする。
 たとえば、 のそれぞれにを付けた はそれぞれ別の意味になりますね。

 ちなみに、南方の中国人のほとんどはr化(巻舌音)の発音ができないため、r化はしません。 では、上の(3)の場合はどうするのか?を取り除いてしまうと意味がかわってしまうのでは?と思うかもしれませんが、同じ意味の別の単語を使いますから問題はありません。
 たとえば、 の代わりにそれぞれを使います。

 つまり、中国人にも、r化をしない人たちがいるのだから、r化の苦手な人はr化をせずに話してもいっこうにかまいませんし、そのほうが無難だと思います。
 元の単語は普通の単語なのに、r化すると、とんでもない別の意味の単語になってしまうものもありますので、よく知らずにr化してしまうと誤解を招く恐れすらあります。

 とは言っても、北方の中国人はr化をして話しますから、北方の中国人と会話する可能性のある人は、少なくとも聞いて分かる程度にはr化を勉強しておく必要があります。

 ちなみにr化のの文字は、北方の中国人でも筆記上は(r化すると意味が変わる単語を除けば)省くことが多いです。

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 では、r化の発音について解説していきましょう。

 基本的なr化の発音は、
car
などの英単語をアメリカ英語で発音するときの末尾の
rと同じで、単語の末尾で舌を巻き上げて音を出すことによって発音します。
 舌を巻き上げるといっても、舌の位置はvol.042で口腔の断面図を使って説明したのと同じ位置まで巻き上げます(舌先は歯茎の裏にくっつけない)ので、正確には巻き上げるという表現は不適切ですね。やはり「そり舌」という表現のほうが適切だと思います。
 この音は英単語の語尾のrの発音に慣れている人にとっては何も難しくないでしょう。

 しかし、r化の発音の難しいところは、r化によってその前の音も変わってしまうことです。

 これには、以下のようなルールがあります。

(1)
rの前のnの音は消える。
 たとえば、
[動詞]遊ぶ、(ゲームなどを)する、弄ぶ
の発音では
nの音はなくなり、warという発音になります。しかしピンインではnの文字が書かれていますので注意して下さい。

(2)
rの前のngの音は消えるが、その代わり母音が鼻音化する。
 たとえば、
[名詞] ひま(空いた時間)
の発音では
ngの音が消え、korという音になりますが、このときoが鼻にかかったような音になります。このときもピンインではngの文字は書かれていますので注意して下さい。

 さて、この鼻にかかったような音はどのように発音するか説明しましょう。

 まず、vol.040を復習してみて下さい。
ngの発音をするときは、舌の根元のほうを軟口蓋にくっつけて発音するのでしたね。舌の根元のほうを軟口蓋にくっつけると、口の奥のほうが塞がり、息が鼻の穴を通って出ていきます。これが鼻にかかったような音となって表れます。(ちなみに鼻をつまんで鼻の穴から息が出ないようにすると、ngの音は(息がつまってしまって)発音しにくくなります。)

 ところが、

の発音の場合は、
kor というふうにngの音が脱落するので、舌の根元のほうを軟口蓋にくっつけるということはしません。その代わりにoの発音をするときに舌の根元のほうを軟口蓋に近づけます(つまり、くっつけはしないけど、軟口蓋をせばめて塞ぎがちにする訳です)。そうすることによって、息が半分くらいは鼻の穴から出るようにします(つまり、それぞれ半々くらいの割合で息が口と鼻の両方から同時に出るようにします)。

 と言っても、この説明だけ聞いても発音をするのは難しいかもしれませんので、もう少し分かりやすく解説しましょう。


 まず先に、
ngの発音のときの「軟口蓋を塞ぐ感覚」を覚えましょう。
 vol.040を参考にして
ngの発音(「んぐ」というつもりで「ん」の音だけを出す)を繰り返して、舌の根元が軟口蓋を塞いでいるときの感覚を覚えて下さい。
 次に、
(実際には
ngは発音せずに、korと発音)
を発音するときに、舌の根元が軟口蓋を塞いでいるときの感覚を再現しながら
orの発音をしてみて下さい。これで鼻にかかったようなorの音が出るでしょう。

(3)
rの前のiの音が消える。
 たとえば、
[名詞] 子供
は実際には
iが消えてxiao harと発音されます。

(4) ただし、
rの前が単母音のiの場合は、それがe(「お」と「あ」の合いの子のような音)に変わる。(ただし、rの前がqijixiyiの場合は事項(5)の通りとなる。)
 たとえば、
[名詞] 事、用事
は実際には
sherのように発音されます。

(5)
rの前がqi、ji、xi、yi(= yu)の場合は、それらの後(rの前)にeの音が加わる。ただし、ピンインでは元の文字のままでeの文字は書きません。
 たとえば、
[名詞] 金魚
の発音は実際には

のようになります。

 なお、
rの前が、iningの場合も(nngの音が脱落した上で)このqi、ji、xi、yi(= yu)のイの音の場合と同様にrの前にeが加わり、つまりerが付くような発音になります。 たとえば、
[名] 〈口語〉明日(あす)
は実際には

のような発音になります。

(6) 上記以外の場合(
rの前がa、o、e、uの場合)は、単純に語尾にrの発音が付くだけである。


 さて、このように書くと、「なんやらr化のルールはややこしくて覚えにくいな」と感じるかもしれません。
 でも、原理を理解すると、このルールはとても簡単です。それを説明しておきましょう。

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 元々、r化というのは、語尾に
rの音が付くのではなく儿(er)の音が付くことです。

 この儿(
er)の本来の音を前の音とくっつけて一音節で発音しようとするときに、前の音がaouの場合はeの音に近いためにeの音が吸収されてしまい(あるいは前の音がeの場合は同じ音なのでそのまま吸収されてしまい)、rの音だけが付いたようなイメージになったのです。これが上の(6)です。

例)
[名詞] ひじ

 あるいは
aoueerの間にinngの音が入っている場合は発音しにくいので、inngが脱落して、aoueerが直接くっつき、ereが前の母音に吸収されてrだけがくっついたような発音になりました。(ただし、ngの前にあった母音はngの名残を留めるために鼻にかかった音に変わります。)これが上の(1)(2)(3)です。

例)

[名] 少しの間、[副] 少ししたら

 また、
erの前の音がshiciなどの場合は、これらのiは日本語のイの音とは違い、eの音に近い(vol.043を参照して下さい)のでereと合体してshercerのような発音になります。これが上の(4)です。

例)


 しかし、同じ
iでもqi、ji、xi、yiiは日本語のイの音によく似た音でeの音とはかなり違うので、合体は行われず、そのまま後ろにerの音がくっついた状態になります。(iningの場合も同様です。)これが上の(5)です。

(=
yu)も同様です。

例)


(やはりngの影響で母音が鼻にかかった音に変わることにご注意!)


という訳でこの原理を理解すれば、上記の(1)〜(6)のルールが自然で覚えやすいものであることがわかるでしょう。




今回は、ここで終わりにします。


(2013年02月04日)


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